和菓子の素材(3)粉のお話

執筆者: 木ノ下 千栄(きのした ちえ)

和菓子にはいろんな粉が使われます。身近な小麦粉、きな粉、片栗粉から始まって・・・みなさんはいくつご存知ですか?

◆小麦粉
 小麦は多くの古代遺跡から麦の穂や粒が見つかっており、原始時代から人類は小麦を食していたと考えられています。小麦粉はメリケン粉とも呼ばれ、タンパクの含有量の多い順に強力粉、中力粉、薄力粉に大別されます。菓子には粘り弾力が出すぎると火の通り、歯切れが悪くなるので、グルテン(いわゆる麩)の含有量の少ない薄力粉が使われます。和菓子の主材料として、こなしや外郎など様々な形に姿を変えます。

◆片栗粉
片栗粉はもともとユリ科のカタクリの根からとったデンプンのことを指していました。しかし昨今はその採取がほとんどなく、その代わりとしてジャガイモのデンプンを「片栗粉」として扱っています。

≪うるち米≫

◆上新粉
 上新粉はうるち米を原料とし、水洗いした米を水切りした後、製粉したもので、主にかしわ餅や団子、草もち、外郎などに使われます。上用粉より粗く、米の風味があるものがよいとされています。
◆上用粉(薯蕷粉)
 うるち米を製粉したもので、上新粉より粒が細かいものを言います。薯蕷(上用)饅頭をはじめ、高級和菓子に使われます。薯蕷饅頭の皮には、薯蕷粉と山の芋(つくね芋)、砂糖が配合されます。
◆新引粉
 イラ粉、真引粉とも呼ばれ、上南粉と同じ製造方法ですが、最後の煎る工程は焙煎機ではなく、炒釜で行なわれます。目の大きさにより用途が変わり、主に打物やまぶし物、高級おこしなどに使われます。
◆しん粉
 うるち米を水洗いしてしばらく置いてから、臼でひき、粉末状にします。その後、十分に乾燥させ、ふるいにかけ、細かい「上しん粉」、少し粗い「並しん粉」に分けます。米の粉の一つで、団子、州浜などや、餅菓子に使われます。
◆かるかん粉
うるち米を水に浸し、そのあと水を切り、それを挽いて粉末にした上新粉の一種です。粒子が粗く、かるかんを作るのに使います。

≪もち米≫

◆道明寺粉
 もとは河内の道明寺で天満宮に供える饌飯のお下がりを乾燥させて保存食としたことが始まりです。昔は干飯を適当な大きさに砕いた携帯食品でした。現在はもち米を水洗いし、水につけた後蒸して乾燥させ、干飯(ほしいい)にし、丸粒、2つ割、3つ割などの適当な粗さに粗引きしたものをさします。
 ⇒道明寺を使ったお菓子・・・桜餅・椿餅など。
◆餅粉(求肥粉)
もち米を水洗いし、水に漬けた後挽いて乾燥させたものです。白玉粉よりも粗い粉で、用途はほぼ白玉粉とおなじです。特に求肥を練るのに使われます。
◆寒ざらし粉
昔は寒中に30日間水にさらして後乾燥させたことから、寒ざらし粉と呼ばれています。現在の作り方はもち米を精白し、一晩浸して漬けます。水切りの後、原料に水を加えながら石うすで挽きます。乳液上になったのを圧搾し、熱風乾燥して作ります。主に求肥、団子、外郎に利用される。
◆寒梅粉
 関東では「みじん粉」とも呼ばれています。もち米を水洗いし、水漬け後、蒸して餅にします。これを色がつかないように焼き上げて粉末状にしたものです。寒梅の名はちょうど寒梅が咲く時節に新米を粉にするところからきたといわれています。主に打物や押物、豆菓子に使われます。
◆上南粉
 上南粉は極みじん粉、また金澤で作られたことによって、「加賀みじん」とも呼ばれます。よく洗米したもち米を蒸し上げ、乾燥させたのち、粉に砕いて少しずつ煎り上げたものです。打物にはよく使われます。
◆氷餅
 菓子の材料として用いられる氷餅は、信州諏訪地方の名物で、もち米を米汁にし、型に入れ、外気で凍結させてから乾燥させます。それを粗目の粉末にして、菓子のまぶし粉として使われています。独特な食感があります。
 ⇒氷餅を使ったお菓子 京菓撰「京若紫」、「五色おはぎ」

≪麦≫

◆はったい粉(麦こがし)
大麦を焙煎して、粉にしたものです。関東方面ではもみ殻が離れにくい皮麦、関西方面では裸麦を使います。はったい粉は和三盆糖や洲浜粉、えんどう粉などとあわせて落雁にしたり、菓子の表面にかけたりします。

≪玄米≫

◆玄米粉
 精白していない玄米を焙煎して製粉したものです。打物やまぶし物などに使われています。

≪蕨≫

蕨粉
 蕨の根茎にはデンプンが含まれているので、これを精製したものが蕨粉です。最近では生産量がとても少なく、今では非常に高級な菓子材料の一つといえます。
 ⇒蕨粉お菓子・・・「京蕨餅」

≪葛≫

◆葛粉
 葛の根からとった粉です。他のデンプンにくらべ、糊状に煮たとき、透明に近くなります。寒天と違い、あまり冷やすと固くなって味が落ちます。ですから良い葛粉ほど、注意が必要となります。

≪大豆≫

◆きな粉
 きな粉は大豆を粉にしたもので、粉になった色の黄色からきな粉(黄な粉)と呼ばれてきました。古くから大豆の粉はありましたが、きな粉として一般化するのは江戸後期に入ってからになります。
◆洲浜粉
 大豆を焦げないように煎って、外皮を除き、それを砕いて粉末にしたものが洲浜粉です。青大豆を用いた青洲浜粉もあり、砕いた粉の色の程度から、きな粉、洲浜粉、豆落雁粉というふうに分別されます。粉末のため、消化によく、香味があります。餅菓子、団子などのまぶし粉や、洲浜の材料に用いられます。

 

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